07

 

 翌日からの実習内容も初日から変化は無かった。

 午前中は学生それぞれが別々の隊に行って実習を受ける。その内容は様々で、第一隊では体力訓練だったり第二隊では通信訓練だったり、第三隊では雑用をさせられたり通信の補助を体験させてもらえたり、情報管理部では整頓をさせられたり……と有意義なのかそうでないのは判断しにくいような体験を多くした。

 午後からは初日と同じ条件のもとでの魔鉱石探索を行う。ロードが倒れた一件から、リュウもその場に残って、実際に探索魔術の使い方を説明しながら探索範囲を広げていくこととなった。

 そんな日々を続けて一週間。

「……なんかさ、空しくならない?」

 昼休み、サイルはぽつりと呟いた。ハンバーグをほおばろうと口を開いたロードはその顔のまま、サイルの方を見ていた。それを見たエコが小さくふき出したが、すぐにごまかすように咳払いをした。

「何が空しくなるって、言うのよ?」

「ほら、実習。他のグループの話を聞いちゃってさあ」

「ほはほふふーぷ?」

 もごもごとハンバーグを口に含んだまま、ロードはサイルに訊いた。

「食べるか喋るかどっちかにしなさいよ。それで、他のグループって何?」

「他のグループ、魔獣討伐とかの実習を始めてるんだってさ」

「……魔獣討伐か」

 ようやくハンバーグを飲み込んだロードが繰り返す。サイルは頷き、エコは視線をテーブルに落とす。

「別に今の実習が充実してないってわけじゃないけどさ、何かそういう話聞くと、ねえ?」

「……確かに。私たちがやってるのは、魔鉱石の探索だけだから」

「実践に活かせないとは思わないけど、思ってたのと違うよなあ」

「……」

 サイルとエコの反応を見て、ロードは何も言えなくなる。

 憧れのリュウ・フジカズから直々に魔術の指導が受けられると張り切っていたロードだったが、実際のところ関わる時間は少ない。思っていたものと違う、というのは一番ロードが感じていた。だからといって、手を抜くことだけは絶対にしたくないロードは、同意しかけた言葉を言う代わりに大きく息を吐き出した。それから、サイルの方を向いて、できるだけ感情を抑えて言う。

「お前が思ってたのがどんなのかは知らないけど、実際は今やってることが全てだろ」

「まあ、そうだけどさあ……」

「どっちにしろ、俺たちはまだ魔鉱石の探索ができてないだろ。それができたら、次の練習をさせてもらえるだろ」

 そうあって欲しい、という願望を込めてロードはきっぱりと言った。サイルはうっと言葉を詰まらせて、苦い笑みを浮かべる。エコはやはりそっぽを向いて小さなため息を吐いた。

 そして昼食が終わり午後の実習が始まった。

「さて、今日の午後も魔鉱石探索を行ってもらうぞ」

「……あの、先生」

 控えめに、サイルは手を挙げる。何かの質問か、と思ってリュウは頷いて言葉を待った。

「そのー……他の実践訓練、とかって、しないんでしょうか?」

「おい!」

 へら、と笑いながら言うサイルにロードが怒りの声を上げた。しかし言われたリュウのほうは怒るどころか「ああ、そういえば」と思い出したかのように呟いた。それを見て、ロードは驚きの表情を浮かべてリュウを見た。

「そういえば、って……もしかして、考えてなかったんですか?」

「まあ、実習担当初めてだからな」

 リュウの言葉を聞いたロードの表情は驚きから呆れに変わる。それはサイルとエコも同様だった。

「そうだな……じゃあ、実際の俺の仕事を手伝ってもらうかな」

「リュウ、さんの、仕事」

 ようやく、リュウに近づけると感じたロードは呟くように繰り返し、再び驚きの表情を浮かべた。頬は、少し赤く染まっている。

「は、はい! ぜ、ぜひ手伝わせて、ください!!」

 

 場所は変わって管理局からかなり離れたところにある森の中。うっそうとしている森の中で、五人はぼんやりとたっていた。

「ここは?」

「まあ、魔獣がよく出るスポットだな」

 ロードの問いに、あっさりとリュウが答える。それを聞いて、学生三人はびくりと肩を震わせた。

「ああ、安心しろ。いたとしてもCランク以下の魔獣、お前らでも対応できるレベルだ」

「……それで、実際に魔獣討伐を行う、ということですか?」

 恐る恐る、といったようにエコがリュウに尋ねる。

「その通り。魔鉱石探索も、魔獣討伐も実践を経て学ぶことがあるだろう?」

「そうですよね!」

 目をキラキラと輝かせて頷くロードに対し、エコとサイルは不安げな表情のままだった。

「Cランクだからって、何か適当すぎない?」

「なんか意外とリュウさんって面倒くさがりっていうか、テキトー主義だったりする?」

「適当主義って、何よ。聞いたこと無いわよ」

「と、言うことで!」

 二人の会話が聞こえたのかどうかは定かではないが、ちょうどいいタイミングでリュウが声を上げた。

「この半径二キロ以内にDランク魔獣が居る。この魔獣を、三人で協力して討伐するように」

 その言葉に、ビィがちらりとリュウを見る。何か言おうとしたが、それよりもさきにサイルが口を開いていた。

「それって、まさか」

「ああ、俺とビィは周辺に結界張ってるから、お前らだけで対処しろよ」

 にっこり、と笑うリュウ。学生三人は呆然とするしかなかった。

 

 

 

 

 

 

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