おたまに―SFX × Magician of Black―魔導管理局の黒き死神―
「o-ta-kuの境地、死神は夢見る」
種別の異形なもの達の出現に、阻まれる羽目になった。
露を守りながらの、戦闘か……。正直、やりにくい状況だ……。
青のタバードを装着した、黒騎士――ヘラルドの一人が、露に向かって高笑いをする。
「あっはっはっはっはっ!これはこれは、瑞穂露ではないか!
男装をしているのは、我々を欺く格好か?」
いとも簡単に、正体がばれた。これは、まずいな……。
「あら、ばれていたの?」平然としている彼女だが、どこか苦々しくなっている様子。
よほど自信があったのか。残念そうにも見えてくる。黒騎士は歓喜になって、律儀に説明をする。
「ふっ。お前のことは、監視役にかかれば、すぐに見つかる」
監視役ということは、始めから見張られたということか。しかし、誰がどうやって……?
黒騎士は、彼女から俺とビィへと視点を変え、冷ややかに笑う。
「おや?その二人は、見慣れぬ顔だが――我々に殺されに来たのか?
なよなよした男と、成長途中の子どもが仲間とは……片腹痛いわ」
完全に馬鹿にした態度だ。そうやって、見かけで判断すると――。
「火傷します。後悔しても知りませんよ」
俺の台詞を、ビィが横どりをした。ドールと契約をしている所為で、シンクロ率が高い。
無表情のままで、目の前の奴らを見据えている姿。
儚げで、おしとやかに見える半面、爆弾を隠し持っている牙だ。おい、勝手に、心の内を読み取るな。
「火傷だと?そいつは、面白い!皆のもの、やっちまいな!」
明らかに、ベタな悪人台詞の攻撃開始だった。
同胞の仲間達や魔獣の群れが、一致団結をするかのように襲撃してきた。
どこぞの女怪人か?そう突っ込みたかったが、今の状況がそれどころじゃない。
魔獣が来ている時点で、魔法が必要不可欠だ。
「――ビィ。まとめて蹴散らせ」 「はい、マスター」
俺の助言に、ビィはすぐに応答した。彼女は片手の人差し指だけで、魔法陣を描き――滑らかに呟く。
「魔術展開」紅蓮の炎が、らせん状になって、襲いかかってきたもの全員を飲み込む。
断末魔の叫びとともに、黒こげと化したなれの果てがあった。これで、魔獣はほとんど壊滅だな。
無残な姿となっている奴らを退け、次々と攻めてくる黒騎士の群れ。
今度は俺だな。ネックレスの紐を握りしめると、力ある言葉を紡ぐ。
「魔術展開!」黒曜石のトップに、薄く鈍い光が輝きを増していく。
ネックレスからロッドへと、変形していく様が見えた。
専用武器と変わったものをキャッチして、俺は黒騎士軍団に狙いを定めた。
「消え失せろ!魔術展開!」叫んだと同時に、闇の波動砲が放たれた。
全てを飲み込もうとする、虚無の塊。姿もろとも、消滅する奴ら。
ビィも露も、この光景を見続けていた。魔力が収縮されると、ロッドがネックレスへと変わり果てた。
俺の首に収まったアクセサリー。愛おしそうに、鎖を撫でた。また、世話になるときがくる。
「終わったな」安堵している俺に、露は血相を変えて、突き飛ばすようなタックルをした。
俺と一緒に転がり、離れたところに移動する。瞬間、今いた場所に、煙の立った穴があった。
その中には、黒こげになっても、奇声を上げる魔獣がいた。まだ、死んでいなかったか!?
起き上がろうとして、露に利き手を掴まれた。圧迫するその力に、俺は顔をしかめていた。
彼女の目は、真剣に帯びたものだった。たった一言。
「――後は任せて」見るものを虜にする微笑。惹きこまれていきそうな、危うさがあった。
俺の腕を離すと、素早く立ち上がった。一歩、二歩と歩き出した。
「露、今すぐ引き返せっ!危ないぞっ!」俺の注意を促す声に、彼女は立ち止まって、一瞥をする。
「フジカズ君、大丈夫よ。後は任せなさい」決意を潜めた答え。
スポーツウェアのポケットの中から、何かを取り出した。
それは――銀のメモリーカードと、白のゲーム端末機。気が狂ったのか、この女は!?
傷ついた魔獣が、露に飛びかかってきた。危険な状態になっても、彼女は口元を緩めていた。
ゲーム端末機の挿入口に、メモリーカードを差し込み、重要なキーワードを発言する。
「――メモリー・スキャン!」露の身体が、白く輝き出した。
兎の耳をモチーフにした兜。銀の全身鎧に、所々、真珠で散らばる。
手から腕の先まで、アンモライトで覆われた小手。腰には装備品がない。
変貌をなした銀の獣人は、耳の長い小型の兎――ネザーランド・ ドワーフによく似ていた。
「…………ウサギちゃん?」 「ぎ、銀兎だと!?」
間の抜けた声のビィに、彼女の変貌の容姿に突っ込む俺と様々だった。