おたまに―SFX × Magician of Black―魔導管理局の黒き死神―
「o-ta-ku達への招待状――青き堕天使」
接近してくる敵に、長耳の銀兎は俊足と化した。残像の如く、素早く動くその様を――。
焦がれた魔獣へと重なった途端、三日月の閃光が放たれた。瞬間、彼方へと飛ばされていく魔物の姿が。
地面に放り投げられ、うつ伏せ状態になった。苦痛の叫びが、フィールド上に響き渡っていく。
魔獣の急所、胸元に植え付けられている核。それに、大きな筋があり、ひび割れていた。
斬られた部分から、冷気が発し、徐々に氷結と化していく。
魔獣は氷漬けと化し、そのまま動かなくなった。完全に、息絶えていた。
銀兎のアンモライトの小手が、小型の三日月刀に変形していた。それも双方だった。
――二刀流スタイルか。明らかに、接近戦向きのタイプだな。納得をしている自分がいた。
銀兎は構えを解くと、俺のほうに振り返った。
「フジカズ君、大丈夫?怪我はない?」その声色は、気遣う風に捉えられる。
フルフェイスで、表情が見えないためか。心配しているようにも、想像ができる。
「……ああ。お前のおかげでな」助けるつもりが、逆に助けられた。裏切られた気分だ。
銀兎バージョンの彼女は、戦闘能力が備え持っている。敏捷性の高い、戦闘タイプか。
あのとき、一人で魔獣の群れをやっつけようとしていたのは――自らが戦士だったためか。
俺達が助けに来なくても、勝利していたに違いない……。
さて、露には新たに聞くことが増えた。質問をしてみるか。
俺が口を開こうとすると、先にビィが彼女に問いかける。
「露さん。あなたは一体、何者なのですか?」
まったく、このドールは。俺が言う前に、ちゃっかりと質問をして……。
「ビィちゃんに、何者と言われると、笑っちゃうわね。今の私は――ピエタス・ミラーよ」
フルフェイスで相手の表情を窺えないが、苦笑しているに違いなかった。
ピエタス・ミラー。“正義の鏡”か。ヒーローに相応しいものだな。
「へえ〜〜!結構、やるねえ!」頭上から、甲高い声がした。俺達は一斉に、空を見上げた。
青の孔雀人が浮遊していた。銀兎と似た感じの戦士か。
兎の次は、孔雀か?色もの満載だな。魅せられて……か。某有名曲を、ふいに思い出す俺って……。
声からすると、まだ声変わりをしていない。俺の予想では、少年だと思う。そう、ロードのような年頃の。
「ピエタス・ミラー。あんたも僕と同じとは、運命を感じるよ。
僕に見つかった以上、黙っていないよ。この――リベルテ・シャリテが、あんたを招待するよ」
青の孔雀人は恥ずかしげもなく、愛の囁きを発した。甘美なる陶酔と、誘惑めいた口説き方。
俺の身体が一気に、鳥肌を立っていた。……こいつ、危ない系か?
険相な顔になっていると、何を思ったのか。リベルテ・シャリテが急に振り向き、問題発言をする。
「――もちろん、そこのカップルも引き連れてね」
……いや、ちょっと待て。俺とビィは恋人同士じゃない。
「私達は、持ちつもたれつの存在であります。決して、深く愛する男女ではありません」
ビィはぶれることがなく、いつも通りの無表情で断言していた。
ああああっ!?余計に、誤解を生みだすことをっ!?泡食っている俺に、リベルテ・シャリテは嗤う。
「ははっ。それを両想いと言うんだよ、お嬢ちゃん」
孔雀の羽根を数本むし取り、手首を使って地上へ投げ捨てた。点々と突き刺さる、孔雀の羽根。
「テンポ・オンダータ」滑らかな口調で唱えた。
青白く光る、無数の羽根。それが線となり、繋ぎ合わせていく。
俺達を包囲する輪となり、結界へと発動する。天にあるのは、電流が流れる、時空の歪み。
その重力に引っ張られた俺達は、悲鳴を上げるすらもなく吸い込まれていった。