おたまに―SFX × Magician of Black―魔導管理局の黒き死神―
「あてのないma-ni-a、情け深い司令官」
俺と質疑が案内されたところは――魔導管理局の会議室。
壁に組み込まれている、立体映像型のコンピューター。
その下には、円卓状のテーブル。俺達3人が、居合わせる形となった。
ここに来るということは、何かしら裏がありそうな予感……。
俺は呼び出された経緯に、問題が来ないように祈った。
デュオ司令官の眼差しは、俺の隣にいる、紺のコートの青年に集中する。
受け止めた当の本人は、不安そうに上目づかいで見返す。
そんな彼に向けて、デュオ司令官は意地の悪い笑みをしていた。
「――さてっと。お前、見たところ、ここの住人じゃないな?
現に、ロードの魔法を見て驚いている。何者なんだ?」
後半の言葉を耳にして、俺の気分を害した。何だ、始めから見ていたのかよっ!
デュオ司令官を睨みつけるが、全く、こちらに目を向けていない。
視線は、質疑に注がれたままだ。見慣れない男に、完全に興味本位だ。
彼に唐突に問われて、質疑は困惑をしていた。
「何者って、言われてもなぁ……」状況が状況なだけに、混乱をしているに違いない。
「――質問を変えよう。お前、どこから来たんだ?こんなところにいるのは、事情が大ありか?」
デュオ司令官は、やんわりとした口調で問いかけた。その本意を探ろうと、目を妖しく光らせていた。
学園の中に、急に現れた不審者。誰が見ても不自然だ。
ましてや、香島質疑という男は――獣人の戦士に変身する。
戦闘力とスキルが高く、襲いかかるもの達を返り討ちにする腕前がある。
――強い。悔しいけど……俺がこの目で、間近で見ているからな。
見据える茶色の目を受け止めて、質疑はため息交じりの回答をする。
「仕事を探しているんだ……。まだ、見つからないんだよ……」
その声は、とても残念そうだった。一瞬、俺は彼の環境を把握した。
あの敵――黒騎士軍団が言う、“就活”の罠にはまって、学校に飛ばされた。
ハローワーク扮した立体映像か何かで、彼をおびき寄せた。
その後、異次元……移転する何らかのアイテムかで、学校にそのまま移動させた……。
相手の性格や行動を利用した、作戦といったところか。
「就職難か。若いのに、苦労人なんだなーー」 「あんただって、まだ若いだろう!?」
デュオ司令官のしみじみした声に、質疑はムキになって抗議をした。
前者はどう見ても、大人になったばかりな、初々しい顔立ち。これが、20代後半なら驚く。
後者は精悍な感じの、シャープ顔。たしか、32歳だったか。完全に、親父の領域。
明らかに、対称的な二人だ。デュオ司令官は、口元を緩めた。質疑に対して、からかいを始める。
「反論するところを見ると、まだまだ幼いねーー。年はいくつだ?」
容赦のない、いじわるな質問だ。俺は心配になって、彼を見た。
タブーだったのか。彼は顔を引きつっていた。間を開けてからの、答えを言った。
「…………25だ」嘘だっ。リュウさんと一つ違いじゃないか!どう見ても――。
「ベビーフェイスか。大学生かと思ったぜ」おい、おっさん。俺の台詞を横取りするな。
「……頼りないと言いたいのか?」肩を落とす質疑の姿があった。よほど、気にしているらしい。
「おいおい!誰もそんなことは言ってねえよ!」さすがの、デュオ司令官も慌てていた。
狼狽しているのが、何だか新鮮だ。彼はやけくそになって、ぞんざいに振舞う。
「ああああああ、もう!仕事を与えてやるから、湿り気の態度をやめろ!」
「ほ……本当か!?あんた、最高だーーーー!」質疑の表情が明るくなった。
感激のあまり、デュオ司令官に飛びつくように抱きついた。
「は、はなせーーーー!野郎に抱きつかれても、嬉しくないわーーーー!」
相手の絶叫が、会議室全体にこだました。……ご愁傷様。
俺は笑顔になった状態で、心の中で呟いていた。
「お、おい、ロード!そんなところで、傍観しないで助けろーーーー!」
う〜〜ん……。大喜びしている男を、無理やりはがすのはな。第一、体格が違うから、無理だ。
「助けろーーーーーー!」ハグをされた男の叫び声が、悲鳴に近い絶叫だった。