おたまに―SFX × Magician of Black魔導管理局の黒き死神

「日常的で優しい――o-ta-kuの起こし方」

 

とんとんとんとんとん……。テンポの良いリズムが刻まれる。

俺はその音のおかげで、おぼろげに目を覚ます。が、瞼が重く塞がれそうだ。

体を起こし、その上にあった毛布をはぎ取り、畳に放った。

両腕を天井まで伸ばした瞬間、無意識に声が漏れる。

「うーーーーんっ」同時に、あくびをする。目を細めて、辺りを見回す。

テレビとコンポが置かれているだけの、畳式の居間だ。

ぶっちゃけ、俺は一人、ここで寝泊りをしたということだ。ビィは別の寝室で、眠っているだろう。

眠気のせいで、まだ半覚醒状態だ。現に、涙目になっている。

俺はバランスを崩さないように、直立になり、小刻みの音がする方向へ歩みよった。

近づく際に、良い匂いがする。導かれる先は――台所。

キッチンの前で、瑞穂露が手際よく料理をこなしていた。

俺の気配に気づいたのか。彼女は振り向いた。こちらを見て、少々苦笑い。

「……起こしちゃったわね」 「いや、今起きたところだ。気にするな」

俺は澄ました顔で、平気なふりをした。野菜を切る音が、心地よかった。というのが、感想だ。

あいつ……デュオの奴、これを楽しみにしていたんじゃあるまいな?

「で、何を作っているんだ?」 「コーンスープと、サンドミックスよ」

コーンスープはわかるが、サンドミックスってなんだ……?

疑問になっていると、後で答えが出てきた。パンに挟む、千切りキャベツ。

その上に乗せている、魚肉ソーセージとスライスした玉ねぎ。マスタードをかけて、両サンドする。

なるほど。これが、サンドミックス。うまそうだな。

「おはようございます、マスター」背後から声をかけられた。振り向くまでもない。

「ビィ。眠れたか?」 「ばっちりと、です」

俺の何気ない挨拶に、彼女は感情のない声で、お茶目に言った。

 

俺とビィ、露の3人で囲まれた朝の食卓。

いつも、誰かさんのせいで、料理を作るはめになっている俺。憤慨な思い出ばかりだな。

今度は、反対の立場になっていると、斬新でいっぱいだ。待つのが楽しみになってくる。

サンドミックスを頬張り、コーンスープを飲みの繰り返しの俺。

……うん。中々の美味だ。料理は問題ない。こういうことができる女がいれば、万々歳だが。

「おいしい?」露は自分の顎に手を乗せて、微笑みながら尋ねてくる。

「もご……んぐっ。ああ。言うことはないな」

俺はサンドミックスを食べつつ、コメントを言った。

俺達の会話に、ビィが無表情のまま、ぼそりと呟いた。

「……新婚さん」 「ぶほおっ!」俺の口内の食べものが、一気に吹いた。

お……お前、なんちゅうことを言うんだ!?

露のほうを見ると、表情が固まっていた。恥ずかしさを通り過ぎている様子だった。

 

 

 

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