おたまに―SFX × Magician of Black魔導管理局の黒き死神

「魔術士見習いは、ma-ni-aと遭遇する」

 

放課後、誰もいない体育館で。俺はその中で一人、訓練を行っていた。

胸元にあるアクセサリーを握りしめ、短き言葉を発する。

「――魔術展開」剣に変形し、両手にしっかりと構えた。

剣先から柄に届く手前の刀身に、闇が纏った。俺の意思が飲み込まれそうな、深い奥底の暗黒。

「…………!?」発動した瞬間、俺の魔力と精神が絞り出されていく。

闇の力は使いよっては、心強い味方となるが――しかし。

火や水などの四大元素の魔法とは異なり、自分のものにしなければ危うい。

短時間で、標的を仕留めなければ……俺自身が危険でなおかつ諸刃だ。

足手まといにならないことと、誰かを守る力になりたいこと。

そして、リュウ・フジカズのように強い男になること――。それが、唯一の俺の掲げる目標だ。

「……い、行くぞっ!」目に必要以上に力を込め、自分の持つ武器を睨みつけた。

鈍い音と同時に、黒き炎が揺れた。素早く剣を振り下ろした。波動の漆黒の火炎が、一直線に飛び出す。

すかさず、腰を引くくして、斜め上に振り上げる。真っ黒な剣圧が、放たれた黒火を真っ二つに割った。

瞬時、爆発と騒音がこだました。熱が籠った爆風が、俺の頬に強く当てていく。

俺が行動を起こす前に、体育館に守りの結界を張っている。そのため、建物自体、崩れることがない。

……それにしても、無茶をしすぎたかな。地べたに尻をつき、両手をぶらりと下げた。

剣が一瞬にして、元のアクセサリーへと戻った。……まだまだ、及ばないや。

俺は荒い息をしていた。スタミナ切れ。基礎体力を作らないとな……それに、痛ててっ。

俺の片方の頬が、少し火傷を負ってしまった。デュオ司令になんてごまかそう……。

俺がそう思っていた時、異変が起こった。空間の歪により、体育館が荒波になって揺れていく。

刹那、場違いの格好をした怪しげな男と、騎士の兵隊達が一斉に出現した。それも、俺の目の前で。

魔術士ではない、一般人か。紺のコートを着た青年。

20代前半、ひょっとしたら、それよりも下かもしれない。

対して、顔の見えない、重装備の姿のウォーハンマーを両手持ちにした黒騎士達。

漆黒の全体鎧に、膝まである蒼のタバード。それらをコーディネイトした、中世の騎士。

対立する双方。最初に発声したのは――。

「ハ……ハローワークは!?職業安定所は、いずこ!?」

青年の第一声が、これまた、場にそぐわないものだった。

リーダー格らしき黒騎士が、少し前に出ると、高笑いをし始めた。

「はははははっ!嘘に決まっているだろう!

香島質疑よ!貴様の就活に対する執着心を、利用させてもらったぞ!」

「そ…そんなあ……!」紺のコートの青年――香島質疑は、それを耳にした途端、激しく落胆していた。

俺は彼に対して、同情を含んだ憐れみの眼差しになっていた。

こいつ、失業者か。よっぽど、仕事が欲しいようだな……。

頭をがっくりさせている彼に、黒騎士は余裕ぶった態度を取った。

「香島質疑!ここが、貴様の最期になるのだ!死ぬがいい!」

最後の台詞と同時に、一気に黒騎士達は襲撃を開始した。質疑に狙いを定めて、襲ってくる。

質疑は緊張した面持ちで、紺のコートのポケットに両手を突っ込み、何かを取り出した。

左手には、灰色の小型のゲーム端末機。右手には、黒のメモリーカード。

……襲われているせいで、気が狂ったのか?早く、助けないと――。

俺の焦りが、彼の次の行動で一気に吹き飛んだ。

質疑は敵を睨みつけたまま、端末機の挿入口に、メモリーカードを入れた。

「メモリー・スキャン!」彼の身体に硝子のかけらが集結し、白い光に包まれていく――。

真黒な鎧姿。対抗する漆黒の騎士とは異なる、黒褐色の重装備。ダイヤモンドの鱗が、胸元を覆う。

貂の形をした兜が頭を覆い、腰には筒のような棒を挿している。

その出で立ちは――黒貂の姿をした戦士。目の前の光景に、俺は開いた口が塞がらなかった。

 

 

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