おたまに―SFX × Magician of Black―魔導管理局の黒き死神―
「死神は、o-ta-kuと出会う」
人気のない、闇夜の一本通路。電信柱に手をかけ、俺は辺りを見回す。
狼男に似た魔獣の群れ。奴らに囲まれている女がいた。
20代半ば〜後半くらいの、そう、俺と同じくらいであろう年齢か。
褐色の髪をセミロングにした、赤眼鏡をかけた妙齢の女。
黒スーツで正装をしているところから、キャリアウーマンといったところだろう。
彼女は怯えることがなく、むしろ戦闘態勢をしている。不敵に笑い、挑発をする。
「ふ……ワーウルフね。そんな大勢で私に挑んでも、敗北になるだけ。
大人しく引き返したほうが、あなたたちの身のためね」
その言葉に、怒りを露わにした咆哮が、こちらまで伝わってきた。一斉に、女のほうへ襲撃していく。
あの女……魔法の魔もできそうにない、一般人だろう!?危ないだろう!?
強張った俺の隣で、ベリー・オブ・ブラック――通称ビィが、情報を伝達する。
「――マスター、あれはAランクの魔獣です。魔術を使用しない限り、勝つのは不可能です」
Aランクか。大層な輩を引きつけてきたものだ。
「どうしますか?」ツインテールの少女の、無表情で淡々とした口調が、俺の心に直に来る。
言われるまでもない。AAA+の魔導管理局の黒き死神の名にかけて、魔獣を蹴散らす。
「ビィ。一気に片付けるぞ」 「はい、マスター」
俺のかけ声に、バディのドールはしたたかに応答した。
俺はネックレスの紐を下げ、両目をつぶった。そして、力ある言葉を紡ぎ出す。
「――魔術展開」刹那、胸元にある黒曜石のトップに、薄く鈍い光が輝きを増した。
ネックレスからロッドへと、徐々に変貌していく。
俺の魔力が込められた、細長い筒状の武器を両手に持つと、狼男の群れに突き出す格好をした。
「魔術展開!」再度、同じワードを唱えた。俺の足元に、闇の魔法陣が現れた。
瞬間、ロッドの最短に黒火が浮かび上がった。放物線を描き、奴らへと落下する。
赤眼鏡の女を除く人外が巻き込まれ、青き紅蓮が包まれた。見事、焼身した。
それでも、生き残っているものがいた。黒こげになってなお、奇声を上げて女に突進をしかけてくる。
「魔術展開」淡々と口ずさんだのは、俺のバディのビィ。
片手の人差し指だけで、橙色の魔力を生み出し、レーザーの如く発砲される。
胸元に命中するや否や、体ごと木端微塵になった。驚いた女はとっさに、右腕で顔をガードしていた。
被害は、俺のほうにも巻き込まれる。飛び交う破片に、早口でワードを唱える。
「くっ……!魔術展開っ!」透明の膜が、俺の身体を覆い被さった。
衝撃と衝動、轟く音が連続し、無情に当たっていく。
治まったとき、俺が立っている地面には、魔の残骸が散らばっていた。
「ビィ!いつも、言っているのだろう!?俺まで巻き込ませるなと!?行動範囲と場を把握しろよ!」
俺の憤慨した台詞に、ビィは無表情のまま力説に訴える。
「マスター。私の辞書には、当たって砕けろというのがあります」
「おま……!?それ、あいつの影響か!?」俺の苦手とする相手――言葉にするまでもない。
ハイヒールの音が、段々とこちらに近づいてくる。赤眼鏡の女は俺達を見据えると、微笑をした。
「あなた達、ありがとう。本当なら、私が相手をするところだったけど……」
その声色は、どこか残念そうであったが。俺は溜息をつき、冷ややかに説教をする。
「あんた、無謀すぎるぜ。一般人で奴らと対抗するのは、どうかしている」
「――あなたの行為は、危険でなおかつ死に直面するものです。
好戦的なのは結構ですが、逃げることも必要ですよ」
きびきびと言う相棒に、深い愛情があるように聞こえる。……変だな、こんなことを想うのは。
「……あなた達なりの、忠告ってこと?ふふっ。戦いに巻き込まれるのは、いつものことよ」
逆に、動じることがない。むしろ、嬉しそうだ。変わった女だな。