朝だった。
「え、まはほひへはいほは、はひへーはね」
訳すると、「え、まだ起きてないとか、サイテーだね」らしい。ここまで訳せるようになった俺って実はすごいのかもしれない。
彼女は口の中に歯ブラシを突っ込みながら俺を起こしに来てくれたようだ。明らかに面倒くさそうな表情であることが、寝起きの俺でもよくわかる。
「サイテーでも何でもいい。俺は寝る」
「はーは」
バーカ、と言うと同時に、彼女の踵が俺の腹に入る。昨日食べたチャーハンが出てきそうになった。
「ぐえっ」
「はっはほほひへへ。はたふへへひはいから」
さっさと起きてね。片付けできないから。彼女の冷たい一言が俺の胸に、爽やかな歯磨き粉のにおいが俺の鼻に刺激を与えた。まったく、朝からこんな目にあう俺って、いったいなんだろう。少しブルーになっている俺には興味のないように彼女はさっさと洗面所に戻る。
「ったく、ひっでーカノジョだな、オイ」
「文句あるなら別れればぁ?」
歯磨きを終えた彼女は、今度は台所で朝食の準備をしている。やかんに火をかけている彼女の背中を見て、そろそろ起きないとあのやかんに入った熱湯をぶっ掛けられそうな気がする。起きないと、死ぬ。
「おはようございます」
「おそようございます。あと二十分でも早く起きればさあ、あたしの手伝いできるよねえ?」
嫌味っぽく、彼女が言う。そういいながらも、テーブルの上には着々と朝食の準備が行われてゆく。
「はいはい、すみません。顔洗ってきまーす」
逃げるように、俺は洗面所に向かう。さっさと顔洗って、まともな顔見せないと彼女に何を言われるやら。
「用意できたよー。早く来ないと朝ごはん、全部抜きよー」
「……鬼」
洗面所に響いた彼女の声に、小さく愚痴っぽくこぼしてから、彼女の元へと向かう。
「はい、おはよう」
ようやくまともに挨拶をされた。朝からどうして俺が、こんなに体力を消費しないといけないんだろう、と笑いながら思った。
友人から無茶ぶりされて書いたお話でした。 ツンツン女子というか暴力的な女子と若干ヘタレ気味の男子が同居していたら、というようなお話です。 個人的に好きなのは彼女の「別れればぁ?」という台詞。自分の創作ではこういった台詞を言ってくれる子がいないのでちょっと楽しかったです。強気な女子って書くのが楽しいですよね! まあ、朝から苦しい思いをしながらも大好きな彼女と幸せに過ごせるのだから主人公の彼は幸せ者ですね!(笑) |