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 常に上位はあの人。隣の学校の、あの人。

「聡子さん」

 私の呼びかけに気づいた彼女は、歩いていた足を止める。ゆっくりと振り向いた彼女の顔には、穏やかな表情があった。「やあ」と手を挙げて挨拶されたので、私も礼をした。それから顔を上げ、彼女を見た。

「今回の絵、なかなかよかったね」

「そんなこと、ないですよ。聡子さんこそ、金賞おめでとうございます」

「やめてよ敬語なんて。同級生なんだからさ」

 ふっと笑う彼女に、私は何も言えなくなる。同級生、とは言っても彼女は常に私より上位にいる人なのだから。

「あの、聡子さん」

「どうしたの、理奈ちゃん」

 名前を呼ばれて、どきりと心臓が動いた。尋ねようと開いた口は動かない。不思議そうに首を傾げる彼女との間に、沈黙が生まれる。その沈黙にはっとなって、私はようやく言葉を発した。

「今回の絵の、モデルの人、って」

「ああ、理奈ちゃんと同じ学校だよね」

「はい。それで、その」

「弘美が、どうしたの?」

 どきり、と動く心臓。彼女の口から出た名前は、私の名前を呼ぶときとは違う響きを持っていた。

「いえ、その。弘美さんとは、どんな仲なのかな、って」

 言い慣れない、さん付けをした弘美の名。彼女は、私の口から弘美の名が出てきて、いったい何を思ったのだろう。

「どうして、そんな事?」

 きっと何気ない質問だと思ったのだろう。彼女は、笑っている。

「絵の中の弘美が、見たことない顔をしていたから」

 私の口から出た言葉に、彼女は「ああ」と納得したような声を上げた。

「私と彼女は、特別な関係だよ」

 たった一言。

 それだけで、また彼女は私より上位に立つ。

 

 

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