工事現場

 

 何かが生まれ、そして無に還る。それは生きるもの、生きてないものすべてに共通することだと思う。ある意味、人生を表すのは工事現場じゃないのかな、とも思う。何もない地から建物ができて、そして取り壊される。生まれて、いずれ死ぬ、人間――いや、すべての生命に等しいと感じるのだ。

「なんていうか、聡子っぽいよね、その発想」

 私の隣の弘美が、少し呆れたように言う。長い付き合いの彼女ならではの発言だ。弘美は、私と同じ方向を見て、「なるほど」と小さく呟いた。

「つまり、聡子は工事現場オタクになったんだ」

「私、そんな話をした覚え、ないけど」

「要約してあげたの。聡子の話は長いから」

 くすくすと笑う弘美。笑うたび、彼女の髪が小刻みに揺れる。

「で、私に見せたいところっていうのは、ここなの?」

「うん。理由はさっき言った通り」

「なんだか、デートには向いてない場所だね」

 私と弘美の家の近くにある、工事現場。元は何もなかった場所に、新たな何かが生まれる。

「そう? なんだかロマンチックだと思うけど」

「きっと、そう思うのは聡子と私くらいよね」

 言葉の中に含まれる、私の名前。ただそれだけが、私にとって大きな幸せとなる。

「いいよ、私と弘美だけで」

 

 

 

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