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#twnovel 07

 

◆冬の雨が冷たくて、一人凍えている。誰かの手を求めているのに、皆、自分の事で一杯になっている。誰にも頼れない、と諦めたときに、隣で誰かが凍えているのが見えた。「大丈夫?」声をかけて手を伸ばせば、相手の手と触れ合う。互いに冷えた手が、わずかな温もりを与え合った。(12.11.24)

 

◆ハロー? お元気ですか、過去の私。また俯いて歩いてませんか? ああ、やっぱりそんな顔して、泣いてるよ。何くよくよしてんの、って言っても届かないよね。わかるよ、わかるから教えてあげる。明日は今日とは違う。どうか明日のことを恐れずに、進んでみるといいよ。(12.11.23)

 

◆夜中の幸せが、朝まで続けばいいのに。いつまでもあの夜を繰り返していたい。朝陽が私を呼んでも、遠くへ逃げ続けたい。あなたの囁きに包まれるあの一時を、繰り返したい。けれど、時間を止める術は誰も知らないから、また朝を迎えるしかない。おはよう、私。今日はいい天気だよ。(12.11.23)

 

◆鏡に映る自分があまりにもひどい顔をしていた。目の下の隈は濃いし、目元とか鼻の辺りの皺も深くなった気がした。可愛くないなあ、若くないなあ、と愚痴って、笑顔を作る。ひどい顔だったけど少しはマシになった。勘違いでも、少しだけ自分に自信が持てた。さあ、今日を始めようか。(12.11.22)

 

◆地元の駅は潮風が強い。旅立つ私にも容赦なく風は当たる。風に乱された髪を手櫛で申し訳程度に整える。風は、冷たい。この風に当たることは二度とないだろう。ここにはもう戻らない。さようなら、私が生きた町。さようなら、私が生きた場所。冷たい潮風を背中に、私は電車に乗る。(12.11.21)

 

◆きっとこんな風になれたら幸せね、と手を繋ぐ。私たちを囲むのは白い百合。その香りが少しずつ体を蝕んでゆく。幸せだね、と囁く声は掠れている。握る手から熱が喪失する。これでいいの、と隣を見る。私たちが結ばれない世界なら、こちらから離れるわ。二人は静かに目を閉じる。(12.11.18)

 

◆君が僕以外の誰かと笑い合うことを許したくなかったんだ。僕以外の誰かに優しくする姿なんて見たくなかった。僕以外の誰かと触れ合う姿なんて。「君には僕がいるよ」無惨な姿の恋人を見て呆然とする君の体を、僕が包み込む。惨めな姿のあの女、笑っちゃうよね。(12.11.17)

 

◆この感情に終止符を。誰かが言ったその言葉が頭の中を駆け巡る。そうだ、終わりにしなければ、と言った自分の声がやけに掠れていて、少しだけ怖く感じた。手に握られているそれを見て、恐怖心を打ち消す。この感情に終止符を。はっきりと響く声。握られたナイフは、誰かの身を貫く。(12.11.17)

 

◆赤いマフラーなびかせて、彼女は街を歩く。派手な色のマフラーは街の喧騒に掻き消される。堂々と胸を張って歩く姿に憧れを覚える物好きも多いらしい。赤いマフラーは風に揺れる。冬色の街に彩りを与えながら、彼女は今日も街を歩く。物好きたちの視線を気にせず、胸を張って、堂々と。(12.11.16)

 

◆本当は、怖いのかもしれない。明日になれば自分は全く違う状態になる。何が変わるか自分でもよく解っていないが、大きく変わるらしい。怖くない、わけではない。でも、ここから変わらなければいけない。このままなんて、辛すぎる。だから私は、前に進むんだ。「……好きです」(12.11.15)

 

 

 

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