#twnovel 03

 

◆寂しがり三日月は寂しさを隠すように笑ってた。口の端、バカみたいに吊り上げて。なんだよ、その顔。ぶっさいくだなあ、って三日月は笑う。気づけば周りには星が、点々。ぶっさいくだなあ、って星も笑ってる。寂しがりな三日月。君の周りには星がいるよ。だからもう、雨は降らない。(12.10.18)

 

◆ワイングラスをぶつけて、乾杯。ガラスの音は高く、耳に心地よく響く。乾杯、と同時に言って、グラスの中の水を飲む。まだ大人になりきれない僕らには、このグラスも、二人向き合うシチュエーションも、不釣り合い。いつか大人になったら、釣り合うのだろうか。(12.10.14)

 

◆中学生のとき、お酒を飲んで、お父さんに怒られた。お前の体が大切なんだ、と私を抱きながら怒ってくれた。今は、私がお父さんを怒ってる。そんなに飲んだら体に悪いよ、って。お父さんは私に近づき、私の頬を、また打った。私の体なんて、どうでもいいみたいに。(12.10.14)

 

◆まるで魔法の呪文のように、カタカナ言葉を店員さんに言うあなた。まるで宝石箱の中身のように、キラキラ光るグラス。何も口に含んでいないのに、頬は火照ってきている。そっとグラスを差し出す、あなた。「乾杯しましょ?」初めての一口。喉に伝わるのは、熱。(12.10.14)

 

◆「なあ、月見酒といかないか?」屋根の上からの声に、ため息で返事をする。隣に座れば、機嫌良さそうに鼻歌まで歌い始めた。「綺麗な夜空を見ながら、愛する人と酒が飲めるなんて、幸せだなあ」杯の中の月が、ゆらゆらと歪む。一瞬だけ、同意しかけた言葉を、酒と一緒に飲み干した。(12.10.14)

 

◆ふざけた話だ。あいつが、あんなに優しくなるなんて。あいつが、あんなに優しいキスをするなんて。ふざけんな。そばにあったグラスの冷水をあいつにぶっかける。呆然とした、あいつの顔はまだ真っ赤だった。酔いから覚めたあいつは、全てを酒のせいにするのだろうか。ふざけんな。(12.10.14)

 

◆言葉は、目に見えるモノではなく、相手に届いているか解らないモノだ。僕の言葉は君に届いているのだろうか。そんな疑問をいつも抱いていた。「届いてたよ、あんたの言葉」真っ黒な瞳は僕に向けられる。言葉はいつしか鋭さを増して、ナイフとなって、僕の胸に返ってきていた。(12.10.13)

 

◆深夜1時の出来事を証明できる人間はいない。暗い部屋の中、一人で居た私に囁いたあの人は、朝焼けの中に霞む。姿無き彼を待ち焦がれた私の思いも、朝陽に消える星と同じ。「また、朝か」深夜1時の囁きを耳の中で反響させながら、私は目を開けた。やはり部屋には、誰もいない。(12.10.11)

 

◆恋をしたら女は綺麗になるらしい。大好きな君がもっと綺麗になったら嬉しくなるじゃないか。「だから僕と恋をしないか?」「またバカなこと言って」呆れた苦笑いを浮かべ、ため息を吐き出す君。その左手の薬指にはら少しくすんだ銀の指輪が、まだ光っている。(12.10.11)

 

◆さよなら愛しい人。そんな歌を、どこで聞いた。愛しい人がいなくなって、そんな言葉言えるはず無いのに。愛しい人よ、逝かないで。涙に混じる言葉は、泡のように弾けて消える。逝かないで、いかないで。涙に混じる姿は、泡のように弾けて消えた。(12.10.10)

 

 

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