[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

#twnovel 02

 

◆朝の満員電車、君を見る。黒いスーツに身を包み、ぴんと背筋を張って立つ姿は一種の芸術。横顔、纏められた髪の隙間から見える首筋、赤い、痕。君が一瞬、僕を見る。震える瞳もまた、芸術。その芸術に痕をつけた唇を、僕はゆっくりと舐めた。(12.10.09)

 

◆占うのは、白い秋桜。純情な乙女の感情は、花弁の如く、白。染まらぬ思いは不気味なほど白く、何も知らぬ美しき恋。思えば思うほど虚構に走り、現実との誤差が生じる。乙女の千切る花弁の色は、赤。現実に染まった彼女の手には、やがて黒い染みがこびりつく。(12.10.09)

 

◆星が流れた。命が、消えた。きっと私も、あの星と同じように消えるのだろう。いや、あんなに美しく消えることはできない。私はこの白い箱の中で、孤独に命を消すのだろう。輝くこともなく、消えてゆく、私の命。せめて、あの人に、見てもらえたら。祈りを込めて、私は目を閉じる。(12.10.08)

 

◆星の命が散り逝く様を、人は美しいと言う。花の命が散り逝く様を、人は美しいと言う。ならば、あの白い箱の中に閉じ込められた彼女の命が散り逝く様は、誰が美しいと言うのだろうか。(12.10.08)

 

◆彼はいつも、笑いながら私に声をかけてくれて、楽しい話をいくつも提供してくれる。けれど、私にナイフを渡す時だけは、笑みがない。琥珀色の瞳は、色を失ったようになる。狩人である故に、同族を殺す気持ち。獣を亡骸を見たとき、彼の瞳に何が映るのか、私には、解らない。(12.10.07)

 

◆最高の宝珠は一人の少女が持っているらしい。しかし、その宝珠は誰も、少女ですら見たことない。「盗もうなんて無駄よ、怪盗さん」「なら、君ごと盗ませてもらおうかな」捕まれた腕に、高鳴る鼓動。少女の世界が今まで見たことのない輝きに満ちた。まるで、最高の宝珠のように。(12.10.07)

 

◆最高の宝を求める男がいた。彼はこの世全ての宝珠を手に入れたが、どれにも満足したことがない。ある日、最高の宝を持つという少女のもとを訪れた。「最高の宝は何処だ」彼の問いに、少女は彼の胸を指して答える。「そこにある、純粋に宝を求める気持ち。それが最高の宝です」(12.10.05)

 

◆「自分が動かないで獲物捕るとかマジ最低」「いかにして自分の労力を少なくするか、それが人形使いの鉄則でね」「うぜえ」魔法屋は呆れながら、二人の言い争いを見ていた。そろそろ止めないとまずいか、と思った時には感情が昂った狩人の頭に獣の耳が生えていた。(12.10.04)

 

◆君のためなら僕は何でもする。君の代わりになるためだけに生まれたはずなのに。君の暗い感情の隙間から外を見ていると、そこが美しく、輝かしく見えたんだ。だから僕も、外に行きたくなったんだ。「今度は、君が僕の影になってよ」そうすれば、あの時君が望んだ世界の、出来上がり。(12.10.02)

 

◆あの日、私を救ってくれた彼は私にとってヒーローだった。ある日、彼が泣いているのを見た。泣かないでヒーロー、あなたは強い。そう伝えると、彼は私を抱き締め、言った。俺は強くない。あの日、君は何も出来ないと絶望していた俺を救ってくれた。君は、俺のヒーローなんだ、と。(12.10.02)

 

 

BACK