PoP×冥探偵3

晴時には悪いが、予定よりも早く高橋さんに会わせてしまった。

そして、晴時に悪いことをしてしまった上に俺は、もう一人ある人物を騙してしまった。

「でっ、彼が噂の霊感少年なんですよねっ!」

ごめんなさい、高橋さん。すまねぇ、晴時。

そう思っている間にもこの人・・・如月なる子は目を輝かせながら晴時を見ている。

すまねぇ、晴時。

 

―――中田少年の襲撃記録

 

「あ、もしかして・・・如月さんですよね?」

高橋探偵事務所の帰り、俺は偶然その人を見かけた。その人の名は如月なる子。昔、俺はこの街に住んでいた。小学2年のとき引っ越すまでずっと仲良くさせてもらっていた。

「え・・・?」

きょとんとなる子さんは俺を見る。外見年齢、中学1年・・・ってそれじゃ俺より年下だろ。とにかく、この人はとても童顔。言っておくが、この人は俺より3歳年上だから・・・高3の、はず。多分。外見からはわからないが。

「・・・中田君・・・!久しぶりだね!!」

「なる子さんこそ、お久しぶりです。相変わらず幼いっすね。」

「幼いって・・・失礼なー。でも、・・・」

なる子さんはそう言って俺を見上げる。あ、そういえば俺いつの間にかなる子さんより身長伸びてたんだなあ。

「う。おっきくなったね・・・。」

「そうっすねー。俺、成長期ですから。」

笑いながらそう言うと、なる子さんが少しムッとした表情になった。俺が引っ越したのは小2時・・・だから、アレから身長差は変わっていないようだ。昔から、俺の方が背が高かった。

「ところで、中田くんはなんでこっちに来たの?」

わざとだろうか?なる子さんは話題を変えた。その視線は斜め上を見ている。

「いや、あそこに用があって・・・」

ちらりと視線を高橋探偵事務所に移した。すると、なる子さんが「え?」と声を上げた。

「探偵事務所に?」

「お知り合いなんです・・・か・・・」

しまった。この人そういえば、相当のオカルトファンでしたよね。あー、忘れてました。

「もしかして、中田君・・・もしかして?!」

ま、ずい。

「もしかして、4番の依頼?!」

「俺じゃないです俺じゃなく友人がっ!!広塚がっ!!」

や、ばい。コレは、あんまりいい回避法ではない。と気づいた時にはなる子さんはキラキラと瞳を輝かせていた。

「そうなの!?すごいね、じゃあ、じゃあ!!」

***

「・・・は?しゅーちゃんの電話番号?」

「う、ん」

引きつった笑顔の中田が頷く。何故いきなりしゅーちゃんの電話番号?と、思ったがその笑顔を見て何となく理解した。

「何企んだお前。」

「えぇ!?なっ、何が?!」

「何が、ってその顔で言うのか?」

明らかに動揺している表情。コイツってこんなに嘘つくの下手だったか?と思ってしまった。

「・・・じ、実は・・・あの、ですね・・・」

中田の説明でわかったことは、オカルトマニアの先輩に広塚の事が知られて、しかもその本人に会いたいと言い出したということだ。

そのオカルトマニアの先輩がただの先輩ではなく、『ちょっとやらかす』人らしい。流石にそんな人と広塚を会わせたら、最悪の事態が発生するだろう。多分、広塚に事情を説明したらこう言うだろう。

「何で・・・俺が、・・・こんな目に巻き込まれねぇといけねぇんだよ―――――――!!!!!」

今度はしゅーちゃんに泣きつくどころかあの探偵事務所を破壊することだろう。それは、いろいろとまずい。

そういう事で、その晩早速しゅーちゃんに連絡した。

 

『と、いう事で今度の日曜日、駅で会おうね^^私も友達つれてくるね!広塚君にもよろしくね!』

携帯の画面を見て、俺は泣きたくなった。会いたくない、と言うのが本音である。

しかし、そう言う訳にもいかないので、『なる子さんのお友達にもよろしくおねがいします』と返信をした。

つい、広塚って口が滑っちゃったから結局、晴時を広塚の代役として日曜日に会うことになった。

ああ、これはまずい展開だな。ちょっと、本当に泣いていいだろうか。と、思った時に晴時からメールが来た。

『しゅーちゃんには連絡した。とりあえず、なんとかなるはず。』

このメールを見て、本当に俺はいい友達を持った、と感動した。感謝の気持ちをたくさんハートに込めて、晴時にメールを送った。

***

「・・・ああ、きてしまったな。」

後ろから、[瀬々良木ぃー瀬々良木でーす]なんて間抜けな声が響く。隣にいる晴時が少し疲れたような顔をしている。でも大丈夫のはずだ。なる子さんが晴時を知っている訳無いし、その知り合いが晴時を知るはずが無い。

「安心しろ、晴時!準備は完璧だ!!」

「・・・なんか、嫌な予感する・・・夜中眠れなかったし・・・」

僅かに目の下に隈がある。大丈夫か、と声をかけて軽く晴時の背中を叩いた。その時、

「あ、中田君!それに広塚君だよねー!」

なる子さんの明るい声が聞こえた。俺と晴時がその声の方を見る。人ごみの中から、必死で跳ねたりしてなる子さんが手を振っている。その隣にいるのは、

「嘘だろ」

間違うはずが無い。あの爽やか過ぎる恐怖の笑みは、間違いなく、

「何で小野が・・・」

「小野君、こっちが私の後輩の・・・ってあれ?」

なる子さんと合流して俺たちはただ何度も瞬きをするしか出来なかった。そして、俺の脳裏には最悪の事態が巡っていた。

***

「とりあえず、お互い知り合っている訳だね。」

しゅーちゃんがそう爽やかに言うが、事態はそんなに爽やかではない。俺を知らないなる子さんと俺を知る小野。最悪だ。

「あ、どーも始めまして!俺、小野勇って言います!よろしくお願いします!!」

「僕はここの所長の高橋柊一郎です。」

なんて爽やかな自己紹介。口の隙間から見える白い歯が輝いている。韓流スターかなんかを目指し始めたのかしゅーちゃんよ。

「それで高橋さんっ!是非、彼を見ての感想を教えてください!!」

ぶっ、としゅーちゃん・俺・中田が吹きそうになった。なる子さん、あなたは空気を読むという事を知らないんですか?一方小野はきょとんとした顔をして何かを言い始めた。

「っていうか、何で広塚じゃな・・・「わわわわわー!!おおおおれ、今日お土産もってきたんですよー!!!!」

「そ、それは嬉しいなっ、そ、それで何を持ってきてくれたんだい、田中くーん?」

「嫌だなぁ、しゅーちゃぁーん、俺の名前は田中じゃなくて中田ですよーあっはははは!!」

さりげなくしゅーちゃんって言ってるし・・・しかしあえてそこには触れないでおいた。二人はぎこちなく「あっはっは」と笑っている。小野はよくわからないという表情をしている。

今説明したいのは山々だが、ここで説明しているとなる子さんに怪しまれる。

「しかし、ひ、広塚君を見ての感想かぁ・・・」

引きつった笑顔のままでしゅーちゃんが言う。いつもの営業スマイルは何処に行ったんだ。

「う、うーん・・・とても明るい少年だと思った、よ。うん、好少年?か、な?」

「そう言う意味じゃないんですよ!ほら、霊的なっ!!」

「え、えーと、それは・・・ね・・・」

あはははー、と笑いながらしゅーちゃんは視線をそらす。小野の方ははじめての探偵事務所に興味があるのか、周りをきょろきょろと見る。その時、営業スマイルでお茶を持った芹川さんがやってきた。

 

「お久しぶりだね、中田君に水市君!」

***

一体どれほど沈黙しただろうか。いや、時間としてはたった数秒だっただろうけど。

なる子さん、小野を除く3人はぎこちなく芹川さんを見た。3人とも引きつった笑顔だろう。

「あ、い、いや、だなぁ・・・碧乃君?か、れは、水市君ではなく、ひ、広塚君だよ?」

引きつっている笑顔で、高橋さんが言った。芹川さんは「え、そうでしたっけ?」と驚いたような顔をして水市を見る。

「あ、はい。俺、広塚です・・・」

「はぁ?何言ってんだよ?お前水市じゃ・・・「わー!!!お茶頂まぁぁぁぁす!!!」

俺は慌てて小野の言葉を潰して芹川さんが淹れたお茶を頂いた。

「ああ、それで中田君、お土産っていうのは?」

「あーっ!!!はい、これです!!!」

俺と高橋さんのやり取りに、芹川さん、小野、なる子さんは怪しげな視線を投げつけてくる。痛い、その視線が激しく痛い。

「君、本当に・・・」

なる子さんが じーっと水市を見る。晴時は笑顔を浮べているが、頬にすっと汗が伝った。

「そういう体験したことあるの?」

「え・・・え?」

「この探偵事務所に相談するくらいだからやっぱり霊体験?霊に襲われた?もしかして宇宙人っ?!」

こうなってしまったらなる子さんは止まらない。それを知っているのか、高橋さんと芹川さんがため息をつく。

「やっぱり、そうなのね!なら、そんなに黙ってないで、この都市伝説研究解明同好会、通称都市研会長のこの如月なる子がっ!!」

「あーっ、あー・・・」

もう、これはついていけない。誰にもこの人の暴走は止められない。そう思っている間にも、なる子さんは今まで都市研で何をした、あれをした、これをした・・・と語り始めた。それを全く興味なさ気に聞く晴時。晴時に対して目をキラキラと輝かせて話を聞く小野。

「・・・」

晴時がこちらに視線を向ける。助けを求める視線だ。けれど、俺と高橋さんは同じタイミングで首を振った。

***

「はぁーっ!すっきりしたぁ!」

満面の笑みを浮べて、なる子さんは言った。その隣の小野も満足そうな顔だし、途中から話に入った芹川さんも幸せそうだ。

ただ1人、水市晴時を除いて。

「せ、晴時ー・・・大丈夫かー・・・?」

俺が晴時の耳元で声をかけたが、反応が無い。完全に魂が抜けきってしまったのだろうか。これは大変だ。

「しゅーちゃんやばいよ、晴ちゃんが抜けきってる。」

「大丈夫・・・と信じよう。僕の知っている晴ちゃんは強い子だから・・・」

若干遠い目をしながらしゅーちゃんがそう言った。しゅーちゃん大丈夫?とはいえなかった。その瞳は悲しみに輝いていた・・・気がする。

***

翌日の学校で

「結局、何でお前水市をわざわざ広塚って嘘ついたんだよ?」

小野が俺の背中に寄りかかりながら訊いた。あの後、小野にしつこく訊かれ結局今日まで持ち越したのだ。

「・・・なに、その話?」

冷たい声が、俺の耳に届く。声の主を見ると、少し驚いたような顔をした広塚がいた。

「え、え・・・?」

「何?!広塚聞かれてないのか?!」

「あ、はい・・・」

いきなり小野に聞かれた広塚は一歩引き目に返事した。「だって、聞かれてないし・・・」と小声で呟いている。

「だって、お前あそこで相談したんだろ、しゅーちゃんのところで!」

「お前さりげなくしゅーちゃん言うな!!」

後ろから晴時が小野に怒鳴った。そういや俺もさりげなくしゅーちゃんって呼んだような・・・、ま、良いか。

「しゅー・・・あ、高橋さんの所。うん、それで?」

「お前に会いたがってるオカルトマニアの先輩が居たんだよ・・・で、お前に会いたいって」

俺が広塚に説明をしていると、広塚の目から光が消えた。そして、

「・・・やだ。」

そう言って、倒れた。あまりにあっさりと倒れたので、俺たちはそれを見るしか出来なかった。

「・・・ひ、ろ・・・?!広塚!?おい、広塚が倒れたぞ?!」

きっと広塚をなる子さんに会わせていたら・・・泣くとか暴れるとかそう言うレベルじゃなく、死ぬんじゃないかなぁと思ってしまった。

 

・・・俺、グッジョブ。

 

 

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