Another Story 白の日、君の日
「俺、生まれたことを後悔してます」
「……は?」
祐希の、また意味わかんない言葉に、あたしはいつも通りに反応した。祐希が変なことをいうのはわりとよくあることだから、軽く流すつもりだったんだけど、いつもよりも深刻な言葉だったからつい、反応してしまった。
「何、どういうこと?」
「いや、だから。今日って日に生まれたことを後悔してるんですって」
「どっちにしろ、どういうことよ」
全く説明になっていない説明に、あたしはため息しか出ない。祐希って頭いいはずなのに、たまに変なこと言うのよね。
「だって、今日って何の日か知ってますか?」
「祐希の誕生日」
「以前に、もう一つあるじゃないですか」
「ホワイトデー」
「そうですよ!」
祐希がこの発言をするのは、実は今に始まったことではない。誕生日を聞いたときから、「俺、ホワイトデー生まれですみません」とか意味わかんないことを言い出したのだ。
「何で俺、ホワイトデーに生まれちゃったんだよ! ああ、もう、せめて一日でも違ったらよかったのに!!」
「はいはい」
「何で未由子さんはそんなに軽くスルーするんですかっ!!」
顔を真っ赤にさせた祐希が叫ぶ。何で、って言われたら……ぶっちゃけると、面倒だからだったりする。祐希が嫌いな訳じゃないけど、毎回毎回このくだりをするのは面倒だし。
「ならさぁ、別にホワイトデー用意しなくていいって言ってるじゃん」
「バレンタインにもらったら、ホワイトデーにはきっちり返すのが俺の流儀です」
「そういうところはしっかりしてるのにねぇ……」
あたしが呟くと、祐希は顔をむっとさせた。しかし、反論できないのは事実だからである。祐希は結構片付け下手だし、料理できないし。
「それとも、あたしのプレゼントが嫌なわけ?」
「嫌じゃないですよ。むしろ嬉しいです。でも……」
祐希が言葉を詰まらせる。俯いて、視線をあたしから反らした。
「俺が渡すのに、未由子さんからもらうのって、何か嫌なんですよ」
「どういうことよ?」
「だって、プレゼント渡した後にプレゼントもらうって、すっごくシュールじゃないですか?!」
あー、なるほどね。確かに、シュールといわれればシュールだとは思うけど、
「別にいいじゃん」
「えぇ?!」
「だって、祐希はあたしの誕生日にプレゼントをくれたじゃん。だから、祐希の誕生日にはプレゼントをきっちり贈る。それが、あたしの流儀です」
祐希が言ったことをそっくりそのまま返すと、祐希は顔を上げた。若干泣きそうな、何とも言えない顔をしているのが、ちょっとおかしかった。
「今後、『生まれたことを後悔した』とか言わない?」
「……言いません。ごめんなさい」
「そうよねえ。だって、祐希が生まれてこなかったら、こんな可愛い彼女ができなかったでしょ?」
冗談混じりに笑いながら言うと、祐希が突然、あたしの手を掴んだ。
「……うん?」
「そうですよね。俺、この日に生まれてきたことに感謝します」
祐希が言った直後、顔が目の前に迫った。予想外の出来事に、あたしは一瞬戸惑った。
「……今のは」
「未由子さんの愛へのお礼」
離れた祐希がにーっと歯を出して笑う。それを見た瞬間、あたしの顔が一気に熱くなった。
「未由子さん、顔真っ赤ー!」
「誰のせいよっ!」
「それで、誕生日プレゼントは?」
「お預けっ! あたしをからかった罰!」
「ええぇぇぇぇっ?!」