特別活動:Christmas for you.

 

「……あれ、しゅげっちゃんだ」

 それは冬が深まったある日。里佳が偶然近くにある百円ショップに買い物へ行くと見慣れた姿が意外な格好をしているのを見かけた。

「里佳?」

 光貴が店の従業員用のエプロンをつけて棚の整理をしている。声をかけられた光貴は数回瞬きをして里佳を見つめた。同じような顔をして、里佳も光貴を見ている。

「最近オカ研に顔出さないと思ったら、まさかバイト?」

「ん、まあそういう事だな」

「意外。しゅげっちゃん、バイトとかしなさそうなイメージあった」

「そう?」

 にこりと微笑んで光貴が首をかしげると、里佳はもう一度「うん、しなさそう」と言った。

「なんか、バイトしなくても好きなもの手に入りそうな感じじゃん」

「俺はどこの大富豪だよ。トランプと人生ゲームぐらいでしか勝てないし」

「いやいや、そうじゃなくってさ、貰えるでしょ?」

 里佳の言葉が少し理解できなかった。光貴が里佳を見つめていると里佳は口を開いた。

「いろんな子から貰ってるでしょ? プレゼントとか、ラブレターとかさ」

「ああ、そういう事ね。いや、でも受け取ってないよ」

 光貴が答えると「うそー?!」と里佳が声をあげた。そんな反応を見て光貴は苦笑いを浮べるしかできなかった。そこまで俺モテモテなキャラなのかな? なんて思って「本当ですよ、本当」と答えた。けれど、里佳は納得していないような表情を浮べている。

「じゃあ、もしかしてお返し?」

「お返し?」

「そう。だからさ、『気持ちだけ、受け取るよ』とか何とか言って、それのお返し」

「うお、そしたら俺超律儀じゃん」

 むしろそれこそありえない。光貴が思っていると里佳はくすくす笑い始めた。

「ま、しゅげっちゃんらしくないよね」

「あらあら、よくわかってらっしゃることで」

「なめんな! 会員のこと理解してないで会長が勤まるもんか!」

 腰に手を当て威張る里佳。さすがです、と光貴は小さく拍手を里佳に送った。

「それで? 結局のところ何でバイトしてるわけ、しかも学校に無断で」

「ん?」

 里佳の言葉に光貴がびくりと反応した。光貴は現在、学校に届出を出さずにこの店でアルバイトをしているのだ。もしも学校にばれたら休学になる、と校則にあった。

「よくわかったな、無断アルバイトって」

「だって、学校で許可してるのは郵便局と巫女さんだけよ。それぐらい常識」

 にやりと笑う里佳に両手を白旗代わりに上げた光貴。光貴は少しあたりを確認して里佳の耳元で囁いた。

「学校には言うなよ」

「もちろん! たーいせつなしゅげっちゃんがオカ研から居なくなったら困るもん」

 その言葉に、光貴の心臓が一瞬止まりかけた。

「ん、そうだよな。俺もまだまだオカ研辞めたくないし」

「でしょ? あたしの活躍に付き合ってもらわなくっちゃ」

 里佳が笑って、光貴も笑った。笑顔を崩さないまま、里佳は尋ねた。

「それで? しゅげっちゃん、誰にクリスマスプレゼント?」

「え?!」

「だーかーら、誰かにクリスマスプレゼント買うためのバイトでしょ?」

 まさかばれるなんて……光貴がそう思っていると里佳は「やっぱりね」と満足そうに呟いた。

「しゅげっちゃん顔に出やすいよ。ま、それがしゅげっちゃんのいいところなんだけどね」

「なんだろ、褒められた気がしない……」

「えー? かなりの褒め言葉よ。それで、ねえねえ、誰に誰に?」

 里佳の顔にも『興味津々』の文字が大きく書かれている、ように光貴には見えた。

「言わないとダメ?」

「だーめ! このオカ研会長さまさまに教えなさい!」

 きらきらと輝く瞳で光貴を真っ直ぐに見る里佳を見て、光貴は微笑む。

「大切な人」

「やっぱりファンの子?」

「いや、そうじゃないな」

「んじゃ、家族? あ、お姉さんとか?!」

「絶対無い」

 光貴の回答にむーっと里佳が表情を曇らせた。なんだか子どもみたいだな、と光貴は思った。そして、里佳の頭に触れて、撫でた。

「だから、俺の大切な人」

「大切な人、って誰? あ、まさか夜維斗?!」

「それはお前のだろ。俺には、俺の大切な人がいるんだよ」

 何だかんだ話しながら、光貴は棚の片付けを終わらせていた。

「さて、そろそろ俺はお仕事に戻らないと怒られますので、この辺で」

「えー?! 教えてくれたっていいじゃん!」

「ま、当日わかるって事よ」

 棚に片付けた商品の、空になった段ボール箱を抱えて光貴は歩き始めた。当日教えてくれるんだろう、と里佳は納得して「絶対教えてよねー!」と光貴の背中に声をかけた。

「……ま、教える必要も無いけどな」

 どうせ渡すんだし。里佳に届くはずの無い小さな声で、光貴は呟いた。

 

 

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