突然ノ訪問者
「これは一体どういうことか、説明してもらおうか?」
「え? いいじゃない、友達なんだし。見学ぐらい」
ここは龍幻寺探偵社。今はその主龍幻寺武史――りゅうげんじたけし――と、その助手東雲魅貴――しののめみき――が客を前にして協議の真っ最中である。
「そもそも聞いてないぞ」
「ええ?!言ったじゃん。昨日、そのときちゃんと社長返事したよ?」
武史は自分の記憶を掘り起こしてみる。……なるほど、そう言われてみれば確かに言われたような気がする。
「ええと、確かなんとかってSNSで……」
「そうそう、そのSNSでフレンド登録……まあ、お友達みたいなものだけど、それで友達になったのがこちらの陽田さん。高校でオカルト研究会の会長をしてるんだって。で、ほら、こういう仕事じゃない? 話したらぜひ見学したいって」
「はあ、陽田さん、初めまして」
そう声をかけられ三人組の一人、陽田里佳はソファーから立ち上がり、自分たちの紹介を始めた。
「あ、えと、どうも。月原高校二年、オカルト研究会会長の陽田です。主な活動は、面白そうなことを調査して『へえ』っていいながら盛り上がることです。あ、こっちの茶髪のほうが朱月光貴っていいます。女の子のことだけは誰にも負けません。あと、こっちの無愛想なのは月読夜維斗っていいます。料理がうまいです。他は……ありません」
「はあ、そう……」
武史はそう言って頭を掻くと、観念して受け入れることにした。
「あの、早速質問が」
手を上げる里佳を、魅貴がビシッと指差しで指名する。
「はい、何、里佳ちゃん!」
「えと、社長さんは客であっても見境無くおさわりを強要するって聞いたんですけど、私にはしないんですか?」
その発言に、横に座っていた夜維斗が飲んでたコーヒーを盛大に吹き出す。「あーあ」といいながら光貴がティッシュを取り出し拭き始める。
「ああそれね。まあ、そうなんだけど、なんか危険な気がしたんだよね」
と、武史は少し恥ずかしがりながら答える。
「え? 危険な香りがする妖艶な女性ってことですか?」
里佳の質問に武史は真顔で答える。
「いや、もっとそのままの意味なんだけど。たとえば背負い投げをくらうとか」
そう言うと、魅貴に目配せをする。魅貴は棚からファイルをいくつか取り出して持ってくると、テーブルの上に置いた。
「まあ、こんな感じだね。ほとんどの仕事は」
三人組は顔を寄せるようにファイルを覗き込む。
「クーラー掃除、庭の草むしり、パイプの水つまり……、なーんかがっかりだなあ。探偵ってもっとこう、浮気調査とか盗聴器探したりとか、そういうハラハラドキドキな感じかと思ってたのに」
光貴のつぶやきに武史が答える。
「しゅげしゅげの言うような仕事も無いことは無いが、まあ、現実はこんなもんだ」
「ふーん……って、しゅげしゅげって何すか」
光貴の問いかけに、苦笑いしながら魅貴が答える。
「ああ、それはうちの社長あだ名つけるの趣味だから。まあ、しゅみは悪いけど。私なんてミッキーだし」
「じゃあ、私と夜維斗はどんなあだ名になりますか?」
里佳の問いかけに武史はなぜか得意げに答えてみせる。
「陽田さんはタリタリ、月読君はツッキー!」
「社長、何で得意げなんですか。……まあ、普通の仕事はこんなもんね。あとはオカルト関係だけど、さすがに資料を見せるわけにはいかないね。守秘義務があるから」
「え? じゃあ、さっきの資料はいいんすか?」
光貴の突っ込みに武史が答える。
「んー、まあいいだろ。クーラー掃除を秘密にしたい奴なんていないだろうし。それに、本当にやばいもんは別ファイルで保存してるからな。防犯対策的な理由で」
夜維斗は、いい加減そうに見える武史の意外としっかりした発言に妙に感心していた。と、急にただならぬ気配を感じて振りかえる。
「おや、今日は客がいるんだな」
いつ事務所の中に入って来たのか、黒いスーツを生きた女性がキャリアウーマン風の女性が立っていた。
「ああ、見学者だよ、鬼堂さん。オカルト研究会なんだって」
武史の言葉に「ふうん」と返事をすると鬼堂はさも申し訳なさそうに三人組に言う。
「せっかく来たんだろうが、ごらんのとおり若い奴らが好きそうな依頼なんてめったにないし、オカルト的なことはいくら頼んでも教えてもらえないぞ。そういうところだけはまともな探偵だからな」
「『だけ』って何です」
「まあ、とにかくせっかく来たんだ。福岡めぐりでもしたらどうだ。ちょうど道真公ゆかりの太宰府天満宮もあるしな」
「なるほど、学生だし学問の神様はいいかもしれないな。どうだい? 行くかい?」
「おお! 学問の神様だから頭よくなるかもしれませんね! 行きます行きます! しゅげっちゃんも行くでしょ?」
里佳の関心は幽霊から神様に移ったようだ。武史はそれを見ると上着を持ち、玄関へと歩く。
「車でいくとしようか、さ、どうぞ」
魅貴や里佳たちは、武史の後にぞろぞろとついていく。一番後ろから夜維斗がとぼとぼとついていくと、鬼堂がすれ違いざまに耳もとでつぶやいた。
「気配を消してたはずなのにな、どうして分かった?」
夜維斗は一瞬考えると、目を合わせず答えた。
「前に……似た様な奴に会ったことがある」
鬼堂は外へと向かう背中に声をかける。
「興味があったら訪ねて来い。お前は武史より使えそうだ」
『dandelion』の柊真平さまからいただきました、龍幻寺探偵社シリーズとオカ研シリーズのコラボ小説!! まさかオカ研メンバーが探偵社に行くなんて……羨ましい、代わってくれ! と言いながらにやにやしながら読ませていただきました! まさかの揉まれない(笑)里佳様や、社長の素敵なあだ名センスや鬼堂さんに気付く月読などなどにやにやのツボを押してくれる要素がたくさん入っていて本当に楽しいお話をありがとうございます! そしていずれ月読が鬼堂さんに使われる日が来るんだろうなあ……とかすでに妄想を始めています(笑) 柊さま、本当にありがとうございました! |