暖かいと思った瞬間、僕の腕は溶けてしまう

暖色エキスパート

 

優しく笑ってくれた君が、いきなり僕の事を「いらない」と言った。いらない、ならまだ優しいか。「消えろ」だった。

「・・・何故?」

「嫌いになったの」

「優しくしてくれたのに」

「五月蝿いわね」

彼女はそう言って、僕ではなく携帯の画面に目を向けた。きっと、その液晶の先には僕の代わりの新しい彼が待っているんだろう。

「そういう事だから。」

「じゃあ何で優しくしてくれたの」

「わからない」

「何で」

「五月蝿いわね」

やっと彼女は僕の方を見た。そして、彼女は小さく舌打ちをした。

「嫌いになったのよ、何度言わせるつもり」

「僕の何処を改善したらいい?」

「いいわよ、もう。君が悪いわけではない」

彼女は呆れたように僕を見る。

「私が悪いの。飽きやすいから。まさか本気にされるとは思っていないし。」

「・・・そうなんだ」

「うん。ごめん」

まるで反省していないような彼女の言葉に、僕はそれ以上深く聞こうとは思わなかった。

 

暖かな炎の色に触れようとしたら、ほらやけどをしてしまう。

暖かな色だと信じて触れたら、溶かしてしまう 暖色エキスパート  情熱に染まったらそれが最後

 

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