回転軸

物語の中心は常に、

たった1人・・・

あなただったのです。

 

「・・・はぁ?」

「何、その反応は。」

「いや、旧石器時代に使われそうな口説き文句だなぁと思って。」

「酷いなぁ。これ、僕の最高の告白だよ?」

そうは言っているが、彼はとてもへらりと笑っている。これの何処が告白だ。

「それで、わたしと付き合ってくださいって事?」

「いや、別に。」

わたしの問いに、彼はあっさりと首を振った。じゃあなんで告白なんてしたんだ。

「何の意図があって告白したのよ。」

「うーん、リアクションを求めて。あと、自己満足・・・かな?」

お前の自己満足にわたしはつき合わされたのか。

「まあ、僕が君の事を好きだってことは変らないよ。」

告白の時はあなた、なんていったくせに今は君。着飾っていたのか。

「ふーん・・・」

「でも、近いと嫌なコトしか見れない、ってあるだろ?」

「まぁ。」

「だから、僕はあくまでも告白するだけ。君を見る事が出来ればそれで満足なんだ。」

いつもと同じ、その優しい笑顔のままで彼が言った。

「ただ・・・僕の一方的な思いを君にも知って欲しかったんだ。」

「知って、どうすれば良いの?」

「だから、これは僕の自己満足なんだって。」

そう言って、彼は大きく伸びをした。

「僕にとって、君は僕を動かす大切な人物なんだ。」

君が居ないと、僕の物語は回らない。

「つまり、回転軸、と?」

「そういう事だね。」

「ふーん・・・」

わたしはくるりと一回転をした。お気に入りのワンピースのスカートが、円を描く。

「こんな感じ?」

「それ、まんまだよ・・・」

「そっか。」

彼はくすりと笑いながらわたしに近付いた。

「それだけ。ごめんね、わざわざ呼び出して。」

「ううん、いいの。」

「それならよかった。」

「わたしも、会いたかったから。」

わたしが言うと、彼は一瞬驚いたような顔をした。

「結構好きだよ、あんたのこと。」

 

この世界は、あなたが居ないと回らない。

そこまで言うつもりはないけど、あんたが居ないと多分面白くないから。

「わたしの・・・回転軸さん。」

 

 

BACK