運命はいつも無残

 

 どこかの誰かが言っていたけれど、テストは終わってからが本番らしい。

「と言う事ですが、出来ましたか?」

「まーったく」

 彼女の問いかけに、用意済みの返事をする。テストが返却されて、私は自分の答案を見る。問題用紙に自分の答えを書いておいて、テスト終わってからすぐに確認したけれど、ほとんどが間違っていた。文法違うし、訳違うし、公式当てはめるのも間違えたし。ここまで来たら、ほとんど半分取れたのは奇跡に近い。

「ありゃりゃ」

 私の答案を覗き込んだ彼女の反応はそれだった。それも予想通り過ぎて、少し笑えた。

「これはひどいですね」

「そっちはどうなの?」

 私が尋ねると、彼女は白い歯を見せて笑った。おお、珍しく彼女も優秀な点数だったのか。そう思って彼女の答案を見る。

「……これはひどい」

「ひどいとは失礼な。これは、あたしにとっての満足な点数よ」

 彼女がそういうけれど、正直その点数はあまりよいとは思えない。いや、私の点数も悪いのだが、彼女の点数もなかなかである。

「ここまで来ると、どうやって間違えたか気になるね」

 私は一つの答えを指さす。どう考えてもそんな選択にはならないようなものを彼女は選んでいた。もちろん間違っている。

「どうやって? そんなの、これで決めたのよ」

 これ、というのは鉛筆、しかも六角形のHB。高校生になって鉛筆を使う、というのは珍しいものだ。美術の授業で使って以来、私はシャーペンの世話になっている。そのため、その鉛筆にも新鮮味を感じていた。

「決めた?」

「うん。こうやって」

 彼女は鉛筆を転がす。よく見ると、鉛筆の先に数字が書かれている。

「まさか、止まったところの数字書いてた、とか」

「その通り」

「リアルにいるとは思わなかった」

「何よ、それ」

 イメージとしては、何十年か前の漫画に出てくる頭の悪いキャラクターがするような技。現実にする人がいるとは思いもしなかった。彼女は何故そんな事を言われたか納得していないような顔をしている。

「褒め言葉、褒め言葉だよ」

「そうには思えない」

「そんなことないよ。でも、これで数学も乗り切ったの?」

 私が尋ねると、やっぱり彼女は頷いた。一から六の数字では決まらないはずの数学の世界を、彼女は鉛筆一本で乗り越えたのだ。いろんな意味ですごすぎる。

「ほら、ここなんて正解だったんだよ」

 そう言って答案のある回答を見せる。確かに正解となっているが、途中式が一切書かれていない。

「すごいでしょ、これで点があったんだから」

「うん、まあすごい」

「だから褒めて褒めて」

 私は彼女の頭を優しく撫でた。彼女が幸せそうな顔をする。

「運命ってすごいよね、こんな風に決まっちゃうんだから」

 彼女が瞳をキラキラと輝かせながら、私に言った。けれど、テストの点数は運命と言うには少し違うように思った。運命って、もっと大きいものでは無いのだろうか。そんな事を思っていると、教室に先生がやってきた。

「おい、お前ら」

 先生が私たちを呼ぶ。そして、先生は不気味な笑みを浮べて言った。

「今日から一週間、放課後補習だ」

「……え?」

 先生の言葉に、私たちは固まった。ああ、これは大きな運命が決まってしまったようだ。

 

 鉛筆ころころ、決定事項

運命はいつも無残で・・・とりあえず、頑張ろっか。

 

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