お前と一緒に転落死

 

 ずっと昔に約束をしたでしょう?

 彼女の言葉に、私は動きをとめた。嫌だと言ったら彼女の表情は暗くなった。

「なんで?ずっと、昔に約束したのに」

「違う、私はこんなことしたくない・・・」

「そんな!絶対に約束は破らないって言ったじゃない!」

 酷いわ、酷すぎる!と彼女が叫ぶ。けれど、私との約束はこんなことではなかったはずだ。彼女と約束はしたけれど、こんな事を望んでなどいない!

「私との約束を破るなんて酷い!」

「違う!そんな事を約束なんてしていない!!」

「そんな!!」

 彼女の瞳に、涙が溜まった。ゆらゆらと涙が揺れて、彼女は首を強く振った。涙が、雨のように落ちる。

「酷い!!何で?!なんで!!」

 そう言って、彼女は私の方に走り出した。怖い、と思って私は一歩下がる。

「・・・な、んで・・・?」

 震えた声で、彼女が呟いた。私は、彼女を拒絶した。だから、彼女は泣きそうな顔をしている。

「何で?!」

「違う!!私はこんなことしたくないの!!」

「いやいやいや!!!私と一緒に行ってくれるって!!」

 ずっと傍にいてくれるって言ったくせに!!と彼女が叫んだ。取り乱した彼女の姿は無気味なもので、私が今まで見てきた彼女と全く違うものだった。

「私と、私と一緒に行ってくれるって言ったのに!!」

 そう言って、彼女が私の手を掴もうと腕を伸ばしてきた。私は慌てて手を後ろにまわした。すると、彼女がまた驚いたような顔をした。

「・・・酷い・・・」

 何度目の言葉だろうか。彼女は酷い、酷い、酷い、酷い!!!とヒステリックに叫んだ。

「もう、やめて・・・」

 私が言うと、彼女は私のほうに走り出した。突然の行動に私は避ける事が出来なかった。彼女は私の腕を強く掴んだ。

「いたい!!!」

「約束したでしょう、約束・・・私と、私と約束してくれたでしょう・・・」

 壊れてしまった、彼女は。私は彼女の手から逃れようともがいたが、彼女の強すぎる力から逃れる事が出来なかった。

「いや・・・いやだ・・・!」

「約束、約束でしょ・・・私と、ずっと昔に・・・」

 あはは、と笑いながら彼女は私を引っ張る。引きずられたように私は彼女の望む方向に進んだ。

「いつか、空に・・・」

 空に向かって、飛んでいこう。笑って彼女が言った。疲れたようなその笑顔が、恐怖で見えなくなった。

彼女は何度も約束が、約束を、と呟いていた。何度も何度も同じ事を言う狂ったスピーカー。

「空に、向かって・・・」

 体が傾いた。いや、そう言った瞬間に私も彼女も地上を見つめていた。違う、地上しか見えないのだ。

 

 空中を舞う私たち

お前と一緒に転落死・・・私を苦しめたのはこの約束

 

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