それいけオカルト研究会!×葬儀屋
「再び、邂逅」
制服姿の男子生徒が、静かに風景を透かしていく。件数稼ぎのように紛れこんでいた、他愛もない仕事。たまにはこんな楽な仕事も悪くない、と思いながら何気なく振り返ると、学生服と眼が合った。――現世で相棒以外の他人と視線を交えるという状況は異様なものだ。死人としての常識がそう認識するより早く、椎名は呆れ交じりの呟きを漏らしていた。
「……なんで同じ生者に二度も会わなきゃいけないんだ」
「俺は慣れてますけど」
とりあえず、といった調子で答える夜維斗の様子に、既視感を覚えた。生者相手になぜだろう、と疑問符を投げると同時、胡蝶の声が飛んでくる。
「椎名君、どうし……あ」
胡蝶が椎名の背の陰から顔を出す。
「この前の」
「どうも」
古びた椅子に座ったまま、夜維斗が短く頭を下げる。胡蝶が斜め後ろでつられたように会釈したが、すぐに一人首を傾げていた。生者と挨拶をしてしまったという事態の不自然さに、彼女もようやく思い当たったらしい。
椎名は再び、夜維斗を見た。学生服の少年が、当たり前のような眼差しで椎名と胡蝶とを見つめている。知人か、通行人か、そんな実在のものを見るような眼で。――受け慣れていない視線だと、それだけを思った。
「今日は持ってないんですか、刀」
「関わるなって言ったはずだぜ」
「関わってきたのはそっちじゃないですか」
呆れたように答える。どういうことだ、と問うと、即答が返ってきた。
「物理準備室はオカルト研究会の部室です。……一応」
得心する。彼らの領域を侵したのは、自分たちのほうだったか。
「……ここ、なにか憑いてたんですね」
夜維斗が思い出したように呟いて、辺りを見渡す。椎名の姿が見えているなら先程の一幕を眼にしていなかったはずはないと思ったが、口には出さなかった。解っていても確認がしたいことはある。そういうものだ。常識の枠外にある出来事であればなおのこと。――否、この少年にとっては、生者の出来事も死者のそれも一緒なのかもしれなかったけれど。
「手出しするのはほどほどにしろよ」
「それはうちの会長様に言ってください」
ちらりと夜維斗が苦笑する。それを合図としたかのように、扉の向こうから足音が聞こえはじめた。忙しなく駆ける靴音。少女が弾んだ声でなにかを叫んでいて、もう一人少年の声が答えている。それはきっと、ごく当たり前の日常風景だ。
夜維斗が慣れた溜息をついた。
「帰ろう」
胡蝶が椎名のスーツを引いて、我に返る。そして何事もなかったかのように、相棒と目配せをする。
切れかけた視界の端で月読夜維斗の姿を捉えながら、――そうかこいつは自分に似ているのかと、椎名は奇妙に納得しながら眼を閉じた。
「淡色綺譚 awa iro ki tan」の斜芭萌葱さまからいただきました、オカ研と葬儀屋シリーズのコラボ小説!! 斜芭さんの仕事の速さに驚きを隠せず、その速度なのにこのクオリティという感動が半端ないです。 椎名くんと似ている月読……だと?! と驚きが隠せませんでした。いや、でも確かに似ているような気がするけど、月読のほうがだるだるしております(笑) あと椎名くんのスーツを引く胡蝶ちゃんにきゅんきゅんしました。胡蝶ちゃんかわいすぎる!! そして月読は椎名くんとか胡蝶ちゃんが部室に上がってもそんな偉そうにしないこと(笑) 斜芭さん、素敵な小説をありがとうございました!! |