ささやかな、休日
何事もない、それはごくありふれた休日。
「……何でこうなった」
「どうした、やけに表情が硬いぞ」
「もしかして、おいしくなかった?」
何気なく零した言葉は、両脇に座る二人の耳に届いたらしく、ほぼ同じタイミングで声をかけられた。
現在の天津雅は、右隣に同級生の三戸貢、左隣には同じく同級生の友近麗華と、二人に挟まれる形で公園のベンチに座っている。傍から見たら、仲良し三人組に見えるかもしれないが、雅としては異様な組み合わせと言うしかなかった。雅と貢、雅と麗華というつながりはあっても、それが一直線に繋がることはない。唯一の接点は同級生ということぐらいではないのだろうか。そんな関係に挟まれている雅は、ただ表情を引きつらせながら麗華が作ってきてくれたサンドイッチを頬張っていた。
きっかけは、こうだ。
家に居ても何もすることのない雅が外をふらついていると、(雅としてはそう思えないが)偶然にも貢と出会い、流れで一緒に外をふらふらすることとなった。特に目的のない二人は学校近くの公園にやってきた。そこに、またしても偶然に昼食用のサンドイッチを持ってきた麗華がやってきて、流れで三人で昼食をとることになった。
――……本当に、どんな組み合わせだよ。
また呟いてしまったら両隣に拾われてしまう、と学習した雅は、思いを口に出さず、代わりにサンドイッチと一緒に飲み込むことにした。救いは、そのサンドイッチが雅の好みの味であったこと――つまり美味しかったことだった。
「美味いな」
そんな雅の心と一致するようなタイミングで、貢が突然、口を開いた。そのタイミングに、雅は飲み込みかけていたサンドイッチをのどに詰まらせそうになった。むせる一歩手前、何とかサンドイッチを飲み込む。
「本当?」
ひょこ、と身を乗り出して麗華が雅の向こう側にいる貢に尋ねる。貢は相変わらずの無表情のまま、しっかりと頷いた。
「俺は嘘を言わない主義だ。友近が料理が美味いと言うのは本当だったみたいだな」
「どこで聞いたんだよ、その話……」
はあ、と呆れ交じりに雅が言うと貢は「ふむ」と頷いて雅の疑問に答えた。
「昼休みから戻ってきたときの雅の表情を見ていたらわかる。あれは、美味い物を食べた後の表情だ」
「お前は何見てんだよ?!」
「確かに、雅ちゃんご飯食べた後幸せそうな顔してるもんね」
「麗華まで……」
両隣から発せられる異様な空気に巻き込まれていることに気付いた雅は、小さな溜息を吐き出した。
「……いい天気だな」
再び、貢の突然の発言。今更、貢が変な発言をしたところで気にしないようになっていた雅だったが、それでも、その貢の言葉はいつもの発言と何かが違うように感じた。
「そうだね」
麗華が貢の言葉に同意したと同時に、ふわりと風が吹いた。夏の蒸し暑さもなく、冬の異様な冷たさもない、秋の涼しい風が、雅の頬を撫でた。
「なんだか、こういう日っていいね」
抽象的な、麗華の言葉。それでも、雅はその麗華の言葉に無意識のうちに頷いていた。
何かに焦ることもなく追われることもなく、美味しいサンドイッチを食べる。秋の風が柔らかく吹く中、友人と一緒にいる。ただ、それだけ。きっと、ごくごくありふれた一日なのかもしれない。
そんな、ありふれた一日が、
「ずっと、続けばいいな」
ふわりと、風が吹く。
「……ん?」
雅は、両隣から視線を感じた。右を見れば貢が、左を見れば麗華が、雅をじっと見つめていた。
「……なっ、何だよ、お前ら……」
「雅がそんなことを言うとはな」
「雅ちゃんがそんなこと言うなんて」
ほぼ同じタイミングで貢と麗華が雅の問いに答えた。あまりにも一致したタイミングの答えに、雅はつい、噴き出して笑った。
「え? な、何か変なこと言ったかな?」
「何が可笑しいんだ?」
「いや……っ、何でもない……」
一通り笑い終えた後、雅は空を見上げる。細い雲が流れる空を見て、雅は、小さく微笑む。
――ずっと、こんな日が続けばいい。
きっとそれは、ささやかな、願い。隣にいる人たちとこんな風に過ごす日々を願うなんて、と思いながら、雅はまた一口、サンドイッチを頬張った。
:あとがき: 初耶有夢さんのお誕生日にプレゼントとして捧げさせていただいたお話でしたー!そしてちゃっかり二次創作という……ね……ひい、すみません!! 今回はタイトルにあるように「休日」ということで、雅ちゃんにもゆったりとしていただこうと思いました。…いや、ゆったりはできてないよな……(笑) ただ、コラボではいつもばたばたさせてしまっているので、なるべく静かに話が進むように努力しました。 本編ではほとんど絡みないですが、貢くんと麗華ちゃんは仲がいいと思います!! 二人とも雅ちゃんの保護者な感じだし!!(笑) 有夢さん、二次創作させていただき、ありがとうございましたー! そして、お誕生日おめでとうございました!! |